top of page
  • gsktn8

胎児は相続人になれるか?


 胎児は相続人になるのでしょうか?

 言い方を変えると、奥さんが妊娠はしたけれども、子どもがまだ産まれない時期に、ご主人が亡くなった場合、ご主人の相続で、胎児はどう扱われるのでしょうか?

 以下のような例をもとに考えてみたいと思います。

亡くなった方にはお子さんが二人いました。 奥さんは三人目の子どもを妊娠していました。

この場合の相続はどうなるでしょうか?

 相続は、被相続人が亡くなるとともに発生します。  とするならば、相続開始時に三人目のお子さんは存在していないことになります。  胎児の状態ではありますが、まだ人ではありません。

 人になって初めて権利義務の主体になるという原則から言えば、相続開始時に人でない以上、胎児は相続人にはなれないはずです。

 しかし、三人兄弟のうち、上二人には相続権があって、下の一人は、お父さんが亡くなった時にまだ胎児だというだけの理由で相続権がないとしたら、あまりにかわいそうだし、不合理だと思われます。

 そこで民法は、胎児についての規定を設けることでこの不合理を解決しています。

民法第886条1項 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。         2.項 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。

 条文からわかるように、胎児にも相続権は認められ、今回の例の場合も、他の兄弟と同じように相続人となることができます。

 また、代襲相続の規定も胎児についても適用されます。

 従って、胎児が代襲相続することもあり得ます。

 次に、胎児と登記について話を移します。

 胎児も相続人になるとして、胎児名義での登記はできるのでしょうか?

 できるとしたら、どのように登記すればいいのでしょうか?

 結論から言うと、胎児名義で相続登記をすることができます。

 理論上は胎児が生まれることを停止条件とするのか、死産になってしまうことを解除条件とするのか争いがありますが、実務上は解除条件説がとられています。

 つまり登記は、胎児名義での登記を認め、死産になった場合、初めから相続人出なかったことになる、という取り扱いがなされています。

 胎児に不動産を相続させる場合、具体的にどのように登記されるのでしょうか。

亡くなったご主人が 山田太郎 妊娠中の奥さんが  山田花子

 とします。

 この場合、登記名義人は

亡山田太郎妻山田花子胎児

となります。

 両親が結婚していない場合の胎児の登記はどうなるか等、この例ではわからない問題もありますが、今回はそういった話は省略します。

 なお、胎児が出生前に、母親を法定代理人として遺産分割協議ができるかについてはできないとされているので、遺言がない場合に、胎児について、法定相続分とは異なる持分での登記がなされることはないと思われます。 

 次に、胎児名義の登記をした、そのあとのことについても書いておきたいと思います。

 胎児が無事生れてきた場合はどうなるでしょうか?

 当然、お子さんの名前は亡山田太郎妻山田花子胎児ではないはずです。  ですので、登記名義人を亡山田太郎妻山田花子胎児から生まれてきた赤ちゃんの名前に変更する氏名変更の登記をすることになります(氏名変更登記をすることは義務ではありませんが、権利関係をはっきりさせるためにもしておいたほうがいいと思います)。

 一方、残念ながら死産なってしまった場合はどうなるでしょうか?

 この場合、死産となってしまった胎児は初めから相続人ではなかったことになります(お父さんの財産が胎児に相続され、新たに胎児を被相続人とする相続が発生するわけではありません)。

 ですので、死産となってしまった胎児以外を相続人とする更正登記をすることになります。

 死産になってしまった場合、胎児の他に子がいない場合など、配偶者の他に直系尊属が相続人になるなど、相続人の構成自体が変わってしまうこともあり得るので、注意が必要です。


閲覧数:105回0件のコメント

最新記事

すべて表示

2024年(令和6年)の4月から相続登記が義務化されます。 これまでの制度では、不動産登記は義務ではなかったので、かなり劇的な制度変更となります。 相続登記が義務化されるまでは、相続登記をしないで放置することも珍しくはありませんでした。 しかし、相続登記義務化以前でも、相続登記をしないで放置することには、いくつかのリスクが存在しました。 放置しておくことで、いざ、相続登記をしようと考えたとき、放置

2023年4月より、相続により相続登記が義務化されます。 相続により不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないことになります。 「知ったとき」となっているので、不動産を取得したことを知らなければ、3年間の期間はスタートしないことになります。  もう一つのルールとして、遺産分割協議の成立により、不動産を取得した相続人は、遺産分割

令和4年度の税制改正により、100万円以下の土地について、登録免許税の免税措置が設けられました。 正確に言うと、以前から同様の免税措置はあったのですが、すべての土地に適用があるわけではなかったことや10万円以下の土地についての措置だったりして、地方の農地等を持っている方等はともかかく、多くの方々にとっては、あまり意味のある措置ではなかったと思います。 それが今回、この免税措置の適用対象が全国の土地

bottom of page